予算配分問題
事業数を$D$として、会社全体の利益は$t=\sum_i^D y_i$となります。
この節では簡単のため、$D=4$とし、各事業の利益は他事業に依存せず独立に決まるとします(独立性の仮定)。
評価指標の導出
$t$の条件付き分布は、正規分布の再生性によって、次式になることが分かります。
$$t|x \sim N\left( \sum_{i=1}^D \alpha_i x_i, \sum_{i=1}^D V(y_i|x_i) + 2\sum_{i=1}^D\sum_{j=i+1}^D \Lambda_{ij} \right)\quad (1)$$
ここで$\Lambda$は分散共分散行列で $$ \Lambda_{ij}= \rho_{ij. x}S(y_i|x_i)S(y_j|x_j), \quad 1 \geq \rho_{ij. x} \geq -1 $$と定義されます。$ \rho_{ij . x}$は$x_i$と$x_j$の影響を取り除いた$y_i$と$y_j$の偏相関で、$\varepsilon_i$と$\varepsilon_j$の相関係数とみなすことが出来ます。予算額の類似性による影響を除いても利益に相関関係がみられる場合にそれを代入するものになります。$S(y_i|x_i)$は条件付き標準偏差で、$S(y_i|x_i)=x_i\sigma_i$です。
目的はこの正規分布の期待値の高さと、計画通りの結果を出しやすくする度合いを表す標準偏差の小ささ、この二つの情報が含まれていて最適化の目的関数になり得る指標を導出する事ですが、$t$が期待値$\mu:=\sum_{i=1}^D \alpha_i x_i$以下の値を取ったときの条件付き期待値、すなわち、失敗したときの期待値がそれに該当します。
これから行う条件付き期待値の導出は、「正規分布全体の期待値の導出」と共通する部分が多いため、そちらを見て分かるところは省略します。
\begin{align} E[t| t \leq \mu] &= \frac{E[t, t \leq \mu]}{P(t \leq \mu)} \\ &= 2 \int_{-\infty}^\mu t N(t| \mu, \sigma^2) dt \\ &= \frac{2}{ \sqrt{2 \pi \sigma^2 } } \int_{-\infty}^\mu (t-\mu) e^{-\frac{(t-\mu)^2}{2\sigma^2}} dt + 2\mu \int_{-\infty}^\mu \frac{1}{ \sqrt{2 \pi \sigma^2 } } e^{-\frac{(t-\mu)^2}{2\sigma^2}} dt \\ &= \frac{2}{ \sqrt{2 \pi \sigma^2 } } \int_{-\infty}^\mu (t-\mu) e^{-\frac{(t-\mu)^2}{2\sigma^2}} dt + \mu \end{align} 第1項目について、$z=\frac{t-\mu}{\sigma}$とおくと、$t=\sigma z+\mu$となり、単調関数で表すことが出来るため、定積分の置換積分法を適用すると、 \begin{align} \frac{2}{ \sqrt{2 \pi \sigma^2 } } \int_{-\infty}^\mu (t-\mu) e^{-\frac{(t-\mu)^2}{2\sigma^2}} dt &= \frac{2}{ \sqrt{2 \pi \sigma^2 } } \int_{-\infty}^\frac{\mu-\mu}{\sigma} \sigma z e^{-\frac{z^2}{2}} \sigma dz \\ &= \frac{2 \sigma}{ \sqrt{2 \pi } } \int_{-\infty}^0 z e^{-\frac{z^2}{2}} dz \\ &= -\frac{2 \sigma}{ \sqrt{2 \pi } } \end{align} 最後の等式はガウス積分の公式を使うことで分かります。最後に第1項と第2項を合わせた上で、式(1)の結果を代入すると指標の完成です。 $$ f(x) = \sum_{i=1}^D \alpha_i x_i -\frac{2}{\sqrt{2 \pi }} \sqrt{\sum_{i=1}^D (\sigma_i x_i)^2 + 2\sum_{i=1}^D\sum_{j=i+1}^D \Lambda_{ij}}\quad (2) $$
$\sum_i^D x_i \leq a $の条件の下で$f(x)$が増加するよう予算配分を調整することを考えることが出来ます。しかし、期待値以下の実績を失敗と定義するのはかなり保守的ですので、必要に応じて第2項の重み係数$2/\sqrt{2\pi}$を下げることになると思います。
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